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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第34章 精神科医 山口④ そして新たな……


カチッ
「先生。アタシの気持ちは伝わりましたか?アタシ本当は知ってるんです。先生もアタシのこと好意を持ってくれてますね?」

いきなり美香は何を言い出すのだ。想像もしていなかった美香の言葉に私は動揺を隠すこともできなかった。

そう。

私はこの美しい少女に医者としての立場を越えて間違いなく好意を持っている。
私は、いつまでも美香の担当医として、この二人だけのかけがえのない時間をこの先もずっと共有したいと思っていた。

しかし、それは絶対に誰にも知られてはいけないことだ。

私はとても慎重に、それは慎重過ぎるくらいに神経を使い、私の美香に対する気持ちを隠してきたつもりだった。

それなのに今、美香が私の気持ちを知っているという。

それはいったいどういうことなのだろうか?

私は美香の次の言葉を待った。

「先生。催眠療法の時にアタシを眠らせるでしょ。その時に…アタシに触れたいように手を伸ばすでしょ。でも、いつもダメだダメだって苦しそうに手を引っ込めるよね。で、自分がどれほど美香のことを想っているか伝えられないことが辛いってつぶやいたりする」

私は体中の血が顔から頭に上がっていくのを感じた。
鼓動が暴れるように早くなる。

なんということだ。

私はすっかり美香が眠っていると思い込み、大恥をさらしていた。

「先生。少し前まではアタシも先生の気持ちは気づかなかったの。でも、今ギルティが現れて、そういうアタシがわからなかったことを教えてくれているの。ギルティはいつもアタシを見守ってくれていたようなの」

美香の話は私の気持ちを大きく揺さぶった。
今、私は医者としてより、一人の男として彼女の話をきいていた。

これから何が起ころうとしているのか?

私は全く冷静に考えることができなかった。



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