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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第37章 精神科医 山口⑦そして新たな・・・



私は自分の愚かさを知った。そしてそれは、すぐにそれは怒りに変わった。いつの間にか両手はこぶしを握りワナワナと体が震えた。体の毛穴という毛穴から怒りが蒸気のように噴き出すような気がした

「なんてことをするんだ。それを渡しなさい」

私は美香の手からボイスレコーダーを奪おうとした

しかし逆に手首を捕まれてひねられたのは私のほうだった。

「これは渡せないなぁ。そりゃこんなのあったら先生の立場はどうなるんだ?だからどうしても力づくで奪うかい?でもワタシはそのへんの男なんかより力は強いけどな。」

刺すように睨みつける目。そして低くドスのきいた声。
紫音だ。


私は紫音の腕力と暴力性に勝てることはないだろう。ボイスレコーダーを奪うのは諦めるしかなかった。

「ね。先生わかった?アタシたちはギルティの力でこうして必要な時に必要なコが表に出れるようになったんだよ。もう不安や混乱なんて怖くないの。それどころか、その場面場面に応じて、それぞれの得意な力を使える。それって素晴らしい力を身につけてるってことだと思えるの」

いつの間にか美香に戻っていた。
彼女の変化は私の今までの理解のスピードを越えていた。
「私は…どうすればいいんだろうか」


「先生をおとしめるのが目的じゃないの。アタシのお願いをきいてくれるだけでいいの。ただ、そうしてくれさえすればアタシはこのボイスレコーダーをどこにも出すことはないんです。」

「お願いというのは美香さんが家を出て一人で暮らすことを両親に認めさせればいいんだね」

「そう。さすがに先生。話が早い。先生が全面的に認めて説得してくれれば両親だってアタシがここにいるよりホッとするんだから、必ず許してくれるはずなん
です。」


「わかった。美香さんの好きなようにすればいい。私は協力すると約束する」


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