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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第42章 イツキの話②

今日は朝から久しぶりに、あのやっかいなヤツがきた。

目眩だ。

年に何度か起こる。

目の前に見える物がグルグルとゆっくり回る。

ベッドに寝ても天井が回る。

飲めない酒を飲まされた時のようだった。

当然、吐き気もする。

初めてこんな症状が起こった時には、頭がおかしくなったのではないかと思ってパニックになった。

最初はCTスキャンなども撮ったりした。
その時の病院の診断は『メニエル病の初期症状』ということだった。

三半規管が機能しない病気らしい。

目を開いて覗くと黒目がグルグル動いていると聞き、それはかなりキモいなと思った。

原因は睡眠不足や精神的ストレスだという。

そういえば最近、生活が大きく変わってきたからだろうなとボクは思った。


とりあえず目眩止めの薬をもらえば症状はおさまるから薬をもらいに病院にきたけど、今日もまた待合室はいっぱいだった。

どこの病院もそうなんだろうけどジィ様バァ様が多い。

しかし、今日はいつもと違った。

ボクの前のソファーに奇跡のように美しく輝いて見える女の子が座っていた。

背筋をすっと伸ばして前をじっと見つめている。
まるでその姿勢まま電池が切れたアンドロイドみたいだと思った。

肩までの長さで、ゆるやかで自然に内に巻かれた黒髪。
細い肩。そして、雪のような白い肌。

ボクは後ろにいて斜めからしか見ることができないけど長い睫毛と大きな目。ハーフのような顔立ちをしていた。

ボクは今までこんなに美しい女の子を見たことがなかった。

一目見た時から鼓動が早くなって体の熱が上がるのがわかった。

このまま、ただじっと見ていたかった。
お願いだから今だけ目眩よ止まってくれ。

そんな風に思っていたら彼女のスカートのポケットから携帯が落ちた。

ボクはすぐに拾って彼女に渡そうとして立ち眩み、体が前に転がった。

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