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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第55章 ボビーさん登場③

「おいおいハンサム君。相手が名のったら次は自分も名のる。これは世界共通のルールや。でないとオレはずっとハンサム君といい続けるけど、そっちの方が嬉しいか?」

そう言ってボビーさんは小さくウィンクをした!?
様に見えたけど、それはただ目にゴミが入っただけかも知れない。

「あ。すんません。ボクは……イッキです」



ボクは初対面で名前をきかれるのが嫌だ。イッキと答えると、それは上か下か?とまずきかれる。上。名字だと答えると、次に漢字は?ときかれる。
うんざりだ。自分の名前を答えたくない人間もいるんだ。指名手配中の容疑者とかだでなくて、そういう人間はいるんだ。
でもボビーさんはそんなことはきかずに、

「うん。イッキ君ね。いい名前だ its key それが鍵だ!うん。かっこいい」
と何かを納得するように小さく2度頷いて言った。

ボクは小学生の頃以来、自分の名前を言ってはじめて嬉しい気持ちになれた。

ボクはボビーという名前から、日本人ではなくてどこかの国の人なのか気になったけど、それは今すぐこちらからきくことではないと思った。

今知りたいのはお互いの名前。呼び名なんだ。それ以上踏み込むにはそういうタイミングがとこかにくるんだと思った。

「あ。オレは純粋な日本人。オレの本名ってすごく堅苦しい武士みたいな名前なん。
もちろん自分の名前だから嫌いなわけではない。だけどどうにも今のオレはもっとフランクな名前でいいんだよ。その方が人とコミュニケーションとるのにスムーズになるんだ。そうオレの名前に必要なのは響きなんだ」

ボクは今までの人生で出会ってきたどんな人にも感じたことのない衝撃を受けた。

ボクがきかずにおこうと思ったことを見透かすようにあっさりと答えた。
まるでタイミングってのは今なんだよ。と言うかのように。

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