
~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~
第56章 ボビーさん登場④
「ではイッキ君。お互い自己紹介も終わったところで、さっきまでこの世の終わりのような顔をしていた君の、この後に用事がなかったらオレに少し付き合ってくれんか。」
そう言ってボビーさんはボクの前を、するするとレールの上を滑るコマのように歩きはじめた。
ボクはまだ返事をしていない。
なのにボビーさんは振り返りもせずにどこかに向かってスタスタと歩いて行く。
しかしボクは全く迷わなかった。
ボビーさんの背中から出る見えないハーネスに引かれるように着いて行った。
大通りから路地に入り、そこからさらに細い路地に入り、民家が並ぶ一角にある喫茶店の前でボビーさんは立ち止まり、やっとボクの方を振り返った。
そして、入るよ、というように喫茶店の入り口の方に顎を振り合図した。
そこはまさに喫茶店だった。
最近流行りの、セルフでカップのコーヒーをもらって飲むようなカフェではなかった。
暖かいハンドタオルのおしぼりが出て、テーブルには灰皿と塩とソースとつまようじが置いてある喫茶店だった。
コーヒーの香りと味噌汁の香りが混ざって、どこか懐かしい空気を作っていた。
ボクたちは店の一番奥の席に向かい合って座った。
入り口近くには、カウンターの中にいる店主らしい年配の男性と、大きな声で話す、これぞ関西名物といえるオバチャンがいた。
「何を飲む?」
ボビーさんはボクにメニューを渡してきた。
ボクはアイスミルクティにして、ボビーさんはホットコーヒーにした。
「あのぉ。さっき、もしボクが着いて来なかったらとか考えなかったですか?」
ボクは信じられないという感じで首を傾けきいてみた。
「そうだなぁ。もしイッキ君が着いて来なかったらそれはそれまでだ。そういう相手にオレの話をしたとしてもどっちみち何もはじまらないはずだ。そんな時は無駄な時間を作らず最短で答えが出たんだと思えばいい。でもオレは絶対にイッキ君は着いて来ると思ったな。」
ボビーさんはタバコに火をつけながらそう言った。ジッポのライターがカコンという音をたてて閉じられた。
そう言ってボビーさんはボクの前を、するするとレールの上を滑るコマのように歩きはじめた。
ボクはまだ返事をしていない。
なのにボビーさんは振り返りもせずにどこかに向かってスタスタと歩いて行く。
しかしボクは全く迷わなかった。
ボビーさんの背中から出る見えないハーネスに引かれるように着いて行った。
大通りから路地に入り、そこからさらに細い路地に入り、民家が並ぶ一角にある喫茶店の前でボビーさんは立ち止まり、やっとボクの方を振り返った。
そして、入るよ、というように喫茶店の入り口の方に顎を振り合図した。
そこはまさに喫茶店だった。
最近流行りの、セルフでカップのコーヒーをもらって飲むようなカフェではなかった。
暖かいハンドタオルのおしぼりが出て、テーブルには灰皿と塩とソースとつまようじが置いてある喫茶店だった。
コーヒーの香りと味噌汁の香りが混ざって、どこか懐かしい空気を作っていた。
ボクたちは店の一番奥の席に向かい合って座った。
入り口近くには、カウンターの中にいる店主らしい年配の男性と、大きな声で話す、これぞ関西名物といえるオバチャンがいた。
「何を飲む?」
ボビーさんはボクにメニューを渡してきた。
ボクはアイスミルクティにして、ボビーさんはホットコーヒーにした。
「あのぉ。さっき、もしボクが着いて来なかったらとか考えなかったですか?」
ボクは信じられないという感じで首を傾けきいてみた。
「そうだなぁ。もしイッキ君が着いて来なかったらそれはそれまでだ。そういう相手にオレの話をしたとしてもどっちみち何もはじまらないはずだ。そんな時は無駄な時間を作らず最短で答えが出たんだと思えばいい。でもオレは絶対にイッキ君は着いて来ると思ったな。」
ボビーさんはタバコに火をつけながらそう言った。ジッポのライターがカコンという音をたてて閉じられた。
