
~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~
第62章 PartTimeLover⑤
「それがラピスラズリに惚れたはじまりやったんや。そこからは、いわゆる後付けやけど色々ラピスラズリについて調べて、さらにどんどん惚れこんだな。この青い石な、ただ青いだけやないんよ。よく見たら白い模様や散りばめられた金色が入ってる。夜空に星が輝いてるみたいなんや。だから『天空の破片』とか言われてるんや。なんてロマンチックや。惚れてまうやんなぁ」
そう言ってボビーさんは数珠のラピスラズリに軽くキスをした。
あまりにも見た目に合わない可愛いしぐさで、ボクはちょっと笑ってしまった。
そう。この人のしぐさはどこか子供っぽく、無邪気で可愛いく見える。
そしてそれはとても魅力的だった。
ボクはこんなに表情豊かな年配の男の人に出会ったことがなかった。
「惚れてる石の名前を店の名前にしたって話なんですね。」
ボクがやっと言葉を返せた。そしてボクはアイスミルクティをストローで吸った。
「そう。そうなんよ。やっと話をそこに戻してくれた。イツキ君ありがとな。だから、オレが言いたかったのは店の名前を考えるのに、コンセプトだとかSEOだとかばかりを気にしてつけたくなかったんや。これから店を作り、育てていき、守っていく。愛がなければアカンやん。だから名前から愛をこめたんや。」
そう言い終わるとボビーさんはタバコに火をつけてボクの顔をじっと見てしばらく黙った。
それは、はい。君の質問に一つ答えたよ。という間のように感じられた。
「それで、スカウトというのはボクは何をやればいいんですか?」
