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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第63章 スカウトマンと良い話と悪い話①

「簡単に言えば、イッキ君が女の子を連れてきてうちの店に紹介する。イッキ君には女の子の稼いだ分の%で手当てが出るんや」

「いや、そんなに簡単に言ってもボクはスカウトどころかナンパだってしたことが無いんです。だいたい正直、女の子が苦手なんです。こんなボクに何故スカウトができるって言えるんですか?」

ボビーさんが何故そんな風に思ったのかがとてもしりたかった。ただ適当に言ってるだけなのだろうか。本当のボクのことを知ったらきっとがっかりさせるはずだと思った。

「たしかに簡単に言ってもスカウトなんて誰にでもできないんや。どれだけ頑張っても一人も連れて来れないヤツがいっぱいいるんよな。でもイッキ君はできるはずや。そやな。まずは、そのルックスやな。そんなハンサムに声をかけられて嫌な気になる女の子はいないやろ。あとは、イッキ君が自分が何をやればいいのか迷ってるからやな。それはネカフェで見かけた時から思ってたんや。それが今日はさりにひどい。何もやらないままで自分に絶望してるみたいや。そういうヤツは一度、自分一人の力だけでどれだけのことできるかって、たとえスカウトでも、やってみたらええんよ。必死でやればなんか見えてくるかもや。」

ボビーさんの言葉は、ボクの頭をハンマーで殴ったような衝撃をくらわせた。

「なんで?なんでそんなことがわかるんですか?」

「おっ!なんや図星か?よし、今日のオレは冴えてるな」

ボビーさんはそう言って笑った。

「ちゃかさないで下さい。本当になんでなんですか?」

「なんで?なんで?ってそんなん、わかるもんはわかるとしか言えないな」

ボクが納得できないという顔をしていると

ボビーさんは少し間をおいて、また喋りだした。

「しかしイッキ君はオレをどんどん喋らせるのが上手いな。わかるか?そういうのも才能って言うをや。まぁこんなんも自分ではわかってないやろうけどな」

そんなわけはない。この人こそ、人に話をきかせる才能があるんだ。ボクの力なんかではなく。全てはボビーさんの計算され組み立てられた流れで、話していて、それにボクは引き込まれているだけなんだろう。

「じゃあ、ここからの話はまた少し長くなるけどええか?」

ボビーさんはそう言ってまたタバコに火をつけた。

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