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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第69章 スカウトマンと良い話と悪い話⑦

「勘弁して下さいよ。本当にボクは人一倍ハートが弱いくらいなんです」

「ふむ。ホンマにそうなんか。じゃあきっとハードな経験をしてきたんやないか?そして強くなったんか?」

「ボビーさんが言うハードっていうのがよくわかりませんが。人並み以上の経験なんてないです。嫌な思い出は多いですけどね」

ボクはそう言って目を伏せてしまった。ボビーさんに探られたくなかったからだ。

「そうなんか。嫌な思い出か。こんなデリカシーの無いオレでもそれはきけんな。いつか、話してみたくなったらオレはきいてみたいもんだ」

「ただ…」

ボクは今の気持ちを伝えたかったけど、うまく言葉が出なかった

「ただ?」

ボビーさんが優しく微笑んだ。

「スカウトとかまだよくわからないし、ボクなんかにできるかできないかわからないけど…やってみたくなったんです」

「おぉ!なんだまだ良い話も悪い話もしてないぞ。」
「はい。なんだかそういうのきいても変わらない気がしてます。条件とかきいて打算的な気持ちでやりたいんじゃなくて、ボビーさんに付いてやってみたくなったんです。」

「なんて嬉しいことを真面目な顔して言えるんだ。それに心打たれない女はいないで。」

「ボクは自分の何かを変えてみたかったんです」

「うん。わかった。アンダーグラウンドな風俗業界にようこそ」

ボビーさんが拳をボクの前に出した。ボクは照れながら自分の拳を軽く当てた。パチン。
そんな音が鳴ったようなきがした。

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