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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第77章 スカウトマンと良い話と悪い話と⑮

コーヒーとアイスティをマスターらしき男性が持って来て、そっと吸い殻が山積みになった灰皿を交換した。

「すっかりタイミング外したみたいで後回しなってしまったんですが、良い方の話というのはどういう話なんですか?」

悪い方の話というのが、ボクを誘ってくれた路上スカウトは違法であるという、良いも悪いも無茶な話だった。それでもボビーさんは全く悪びれる感じは無く、ボクはというとすっかりやる気になってしまっている。だんだんわかりかけてきたかも知れない。この話の流れの組み立てこそがボビーさんの話術なんだと。

ボクには良い方の話というのも想像がつかない。しかし、何であるのかききたくて仕方なくなっている。ボビーさんの術の中なのだ。
「あぁそうだった。でも悪い方の話をきいても全然動じ無かったイツキ君に良い方の話がいるかな?」

「そりゃいるでしょ」

「やっぱりそうやな」

「ははははは」

「ハハハハハ」

ボビーさんの軽いボケにボクが突っ込んだ形になってしまった。
いつの間にかボビーさんとのやり取りの間が合って来た。ボクたちは思いっきり愉快に笑った。

「良い方の話というのは、近々ラピスラズリのスタッフに空きができるんや。今サブをやっているリュウイチは路上ライブやるレベルのミュージシャンやねんな。自分たちで作ったCDを手売りしたりな。それが、小さなライブハウスでやれるようになってきたみたいやねん。で、そっちに集中したいってことで上がるんや。オレも夢を追いかけてるヤツは止められんやん。で、リュウイチの後がまがいる。それでイツキ君や。スカウトというのは当たればでかい。女の子を一人二人三人と入店させて、その女の子たちが店に残っていればそれなりにいい稼ぎになるけどな。関西にも月に100以上稼ぐスカウトマンは何人かいるな。ただ、最初からそこまではならんから、何かのバイトと掛け持ちをしたりするんや。もちろんネカフェの仕事があるイツキ君は心配無いかもだけどな」

「ネカフェは今日辞めました」

ボクはネカフェも続かない男なんだと思われただろうか?ボクにはボビーさんの話は無理だと思われただろうか?。
でも、今回のボクはできるできないでなくて、どうしょうもなくやってみたくなっていた。

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