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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第78章 スカウトマンと良い話と悪い話⑯

「今日辞めたんか。それは良かったとでも言えばいいのかな?いずれにせよイツキ君はアソコには長くはいないからな」

「はい。それは自分でも感じていました。ただ、次にやってみたいってことがなかなか無かったんです。それが今…」

「それが今…?怪しい男と共に目の前にやってきた」
ボビーさんはイタズラっぽく言った。

「そういうことかも知れません」

「よし。それなら遠慮なくイツキ君を誘いたいな。うちの店で働きながらスカウトをやるんや。それだけでも、きっとネカフェよりはずっといい給料になるはずやけど、イツキ君にはスカウトの時間も作ろう。そして、ここで、本当にいい話や。今なら特典がついてくる」

「特典!?」

またこれだ。ボビーさんのこういう話の流れにボクはのせられてしまう。しかしかまわない。ボビーさんの術の中は楽しみに満ちていたからだった。

「そう特典だな。イツキ君は車の免許は持ってるな?」

「はい。持ってます。自分の車が無くて、たまにオヤジの車を借りるくらいしか乗らないですが」

「うん。それなら良かった。リュウイチが上がることになって、リュウイチに貸していた車が空いてくるから、それをイツキ君に貸すな。」

「えっ?本当にですか?いきなり車を貸すなんて大丈夫なんですか?」

「いや。オレらの仕事は車が無いとはじまらないんや。だいたい、今から勤務時間も相談なるけど、電車が無くなってからも店は動いてるんやからな。」

「そうですか。わかりました。全てはボビーさんにまかせようと思います」

「そう言ってくれるとありがたいな。車は新型プリウスな。燃費考えたらハイブリッドがええんよ。走りは大人しいもんや。でも、今どきは、デリのドライバーにも無茶な走りはさせんのよ。違反もやけど、事故なったら取り返しつかんからな。そうそう。リュウイチが中のデッキやらスピーカーやらを触って音系はめちゃくちゃパワフルになってるで。ロックミュージシャンがやることやからハンパない。あの静かなエコカーが日本一うるさいプリウスって呼ばれて走ってた」

「ありがとうございます。それは凄く楽しみになります」

「じゃあさっそくやけど、うちの事務所を見学して細かい打ち合わせをしようか」

こうしてボクのデリヘル&スカウトマンの生活が始まった。

20歳。もうそこまで春がやってきていた。

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