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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第81章 風とともにはじまる③

ボクまだここで仕事するってちゃんと言ってないんです」

ボクはとても申し訳なさそうに言った。

「あらら。それは痛い。いや、申し訳ないな。何?何?ボビーさんが強引に拉致してきたの?あまりに男前やから?」

ボビーさんの方を睨むような顔をしてケンさんが言った。
ボビーさんはタバコをふかして知らぬ顔をしている。
「いや、そういうわけでもないんです。ボクはスカウトマンの話から、すっかりボビーさんの話しに興味を持ちました。だから、一緒にお仕事してみたいって感じのことは伝えました。でも、スタッフとしての話が出てから、正直まだどうしていいのかわからなくなってしまって。でも、ここは覚悟を決めてやってみようって決心しました。後で後悔しないためにもしっかり言葉でそれを伝えたいんです。」

ボクはケンさんの顔を見て、そしてボビーさんの顔を見て言った。

「なっ?いい男やろ?ケン抱きしめてあげてくれ」

ボビーさんがケンさんの脇腹を肘でつついた。

「うん。それはオレはとてもよくわかる。たしかにオレもきっちりボビーさんに宣言したな。「一緒にやらせて下さい!」って。そしたら思いっきりボビーさんに抱きしめられたけどな」
ケンさんはとても真面目な顔で言った。

ボクは二人の前でいきなり起立した。

「わからないことばかりですが、宜しくお願いします!」

今まで人前で出したことのない大きな声が出た。
それに一番驚いたのはボク自身だっただろう。

ボビーさんとケンさんは握り拳をボクの方に向けた。
ボクは自分の綴じ込もっていた殻が割れていくのがわかった。

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