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お兄ちゃんはいちご味

第2章 いちご味




ガララッ―――


「すいません、具合悪いんで、休ませてくださ…」


あれ…?

よく見たら、保健室のドアに貼紙がある…

保健室の先生は、午後から出張なので、用がある人は職員室に……?



まあいっか、ベッド借りるだけだし。

誰も来ないならゆっくり休めるじゃん!



でも、どうせならやっぱり、昨日ちゃんと血を吸っておけばよかった。

喉が渇いて、どうしようもない……




あぁあたし、このまま誰の血も吸えないで、ひからびて死んじゃうのかな……

なんだか急に心細くなってきた。




「…ぐすっ……うぅ…パパぁ…………」


あーあ。こんなことで泣くなんて…我ながら格好悪い……





ガララッ―――


突然保健室のドアが開いた。




「…果乃………?」



この声は………



「お、お兄ちゃ……?」


お兄ちゃんはびっくりした顔であたしに駆け寄ってきた



「どうした?……俺、お前が昨日工藤先輩とキスしてたって聞いて……それで……」

お兄ちゃんは顔を歪ませながら興奮気味で話す。


「美子がお前が保健室に行ったって…………お前、なんで泣いて………もしかして工藤のやつに、無理矢理キスされたのか………!?」


息が上がってる。

もしかして、走ってきてくれたの………?




「…ち、違う…違うよ……キスなんてしてない………!」

あたしは涙を拭いて、全力で否定した。



「あたし……あたし、血が…ほしくて………」

「……え、血………?」

「工藤先輩の血を吸ってやったの。でも…全然おいしくないし、それで………」

「…………」

「だから……キスなんかしてない!」

「……うん、わかった。もういい…」



言っちゃった。言ってしまった。

あたしが吸血鬼体質に覚醒したこと……



お兄ちゃんに知られたくなかったのに、

でもお兄ちゃんに工藤先輩とキスしたって誤解されるのは、もっと嫌だった………


噂なんかどうでもいい。
でも、お兄ちゃんにだけは………



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