お兄ちゃんはいちご味
第1章 あまい匂い
放課後、あたしは家路を急いでいた。
梅雨入りする気配もない6月の日差しは、眩しくて熱くて眩暈がする
それに、ひどく喉が渇いた。
いちご牛乳なんかじゃごまかしにもならない。
あぁ、いちご牛乳なんかよりもっともっと甘い血が飲みたい―――――
「果乃」
後ろから名前を呼ばれた
振り向かなくても分かる。この甘い声は…
「お兄ちゃん…」
白シャツがよく似合ってる夏服姿のお兄ちゃんがいた。
や、やばい…
どうしよう……
少し猫っ毛の薄茶色の髪の毛はサラサラと風になびいてる
細身でスラッと高い身長に、甘く優しい声
綺麗で中性的な顔立ちのお兄ちゃんは、昔から女の子の人気が高かった
だから、あたしはいつもお兄ちゃんをとられたくなくて必死で―――
って、今はそれどころじゃない!!!
目の前にお兄ちゃんがいる…
甘い匂いがする…
おいしそう………
そう、あたしはお兄ちゃんが食べたくて仕方ないのだ。
お兄ちゃんと一緒にいると、今にも飛びつきそうになるから…なるべく会わないように努力してたのに…
「果乃?」
うぅ…そんな甘くとろけそうな声で名前を呼ばれたら……
「あのさ、ムカつくから言うけど、最近俺のこと避けてるよね?なんで?」
お兄ちゃんは明らかに不機嫌そうな顔
「べ、別に何もないよっ…」
お兄ちゃんがおいしそうで食べたくて我慢できないから避けてるなんて、絶対言えるわけない!
「あっそ…」
お兄ちゃんはそう言ってあたしを追い越してスタスタと歩いていった。
けど…明らかに…怒ってた……
「………はぁぁ……」
こんなの、おかしいって分かってる。
この異常な症状の理由、ほんとは薄々分かってはいるんだ、でも――――