お兄ちゃんはいちご味
第6章 満月の夜
だけどいまさら妹を女の子として見てなんてくれないってことぐらい分かってる
あたし、どうしたらいい…?
「ぁ……月神さ…ん……」
昼休み、隣のクラスの中川君と体育倉庫で待ち合わせていた
お兄ちゃんの血が吸えなくても、
誰かの血を吸わなければそのうちまた倒れてしまう。
だからこうやって昼休みに適当な誰かと待ち合わせて血を吸っている
チュゥ…チュ…チュル…
「…ん……はぁ……」
血を吸う音と中川君の甘い声が体育倉庫に響く
中川君は前からあたしに好意を寄せてくれていたみたいだった
そういう人はたいてい簡単に血を吸わせてくれるってこと、この一ヶ月で学んだ。
あたしは好意の気持ちを利用して血を吸っているんだ―――
『血を吸う相手は単なる食事』
『情を持つだけ無駄だよ。愛情なんてもってのほか』
パパの言葉の意味が、なんとなく分かったような気がする
血を吸われる感覚には中毒性があるってことも分かった
中川君は、もうあたしの牙の虜。
たしかに最初はあたし自身を好きでいてくれたんだと思う
でも今は、中川君が求めているのはあたしじゃなくて血を吸われる快楽そのもの。
これが吸血鬼と食事の関係
血をもらう代わりに快楽を与える
所詮単なる食事なのだから、これでいいんだよね―――