お兄ちゃんはいちご味
第6章 満月の夜
あたしは仕方なくテーブルに座る
お兄ちゃんとごはんを食べるなんて久しぶりだ…
やっぱり、嬉しい…
それにしても、お兄ちゃんと二人きりのリビングは
すでにお兄ちゃんの甘い香りで充満している
ドクン…ドクン…
お兄ちゃんの匂いに、鼓動がはやくなる。
はぁ…はぁ…
お兄ちゃん…
すごく甘くて、おいしそう…!
一ヶ月も味わってないお兄ちゃんのいちご味の血を想像して、
あたしは生唾を飲み込んだ。
一ヶ月も吸っていないと、匂いだけで我慢できなくなりそうだった
「よし、食べるか」
お兄ちゃんがサラダを運びながらあたしの向かい側に座った
「い、いただきます…」
ドクン…ドクン…
シチューの味なんか全然わかんない。
向かい側のお兄ちゃんの甘い匂いに、頭がクラクラする
どうしよう…
我慢できない、かも…
「どした?具合悪い?」
あたしの葛藤を知らないお兄ちゃんは、心配そうにあたしを見る
「大丈夫!全然大丈夫っ!」
「……そう?」
「あ、あのさ!ゆりさんっていたよね!」
あたしは話題を変えようと、とっさにゆりさんの名前を出した
「え、………ゆり?」
お兄ちゃんの表情が固まる
「うん……お兄ちゃん、付き合ってんのかなって」
お兄ちゃんの顔が見れない。
本当のことを聞くのがこわい。