『幼なじみ』
第16章 要塞
目の前を・・・
色とりどりの車が
猛スピードで行き交う中・・・
大勢の客の行列が・・・
クラブの前の歩道に
一段と・・・
膨れ上がって行く・・・。
徐々に・・・
緊張が高まって行き・・・
焦って転ばないよう・・・
しっかりと
信号機の柱に掴まり・・・
深呼吸した拓弥は・・・
まず最初に・・・
自分が何をしなければ
ならないのか・・・
一旦頭を
整理しようと・・・
この辺りで
冷静になれる
静かな場所を探す為・・・
記憶を司る
前頭葉を
フル回転させる・・・。
すると・・・
名案が閃いたのか・・・
小走りで・・・
横断歩道を渡り・・・
クラブの前で
仁王立ちしている・・・
顔馴染みの
黒人セキュリティに
挨拶を済ませ・・・
人混みを掻き分け
脇道を抜けた拓弥は・・・
クラブの裏手の・・・
【staff・only】
と書かれた・・・
重い鉄の扉の前に
静かに身を潜める・・・。
ハァ・・・ハァと
肩で息をしながら
煙草に火を点け・・・
落ち着きを
取り戻そうとするが・・・
薬物を堂々と
持ち歩いている不安と・・・
東京連合に
一人で・・・
立ち向かわなければ
ならない恐怖に
怖じ気づいてしまい・・・
拓弥がカタカタと
小刻みに震えだした・・・
その瞬間・・・
タッタッタッと
暗い脇道から
此方に向かって来る・・・
軽快な足音が
拓弥の耳をかすめた・・・。