『幼なじみ』
第27章 待機
「何々・・・?!拓弥・・・?
握手なんて・・・
喜多見さんの件が
全部・・・
上手くイッテからに
してよ・・・!
そんな事より・・・
兄貴・・・
皆に挨拶済ませて・・・
コッチ・・・
向かってるかもよ・・・?
良いから・・・早く行こッ!」
いつも通りの・・・
爽やかな笑顔を
浮かべる春斗は・・・
気を使いながら・・・
握手を催促する
拓弥の左手に・・・
そっと
自分の右手を添え・・・
何気なく・・・
ゆっくりと・・・
下に押し込んでくれる・・・。
そんな春斗の
自分には真似の出来ない
紳士的な行動に・・・
またしても
感銘を受けた拓弥は・・・
少し・・・
照れ臭そうに・・・
下を向くと・・・
「春斗・・・?あのさ・・・
お前の・・・この恩義・・・
俺・・・一生・・・
忘れねーし・・・
もし・・・
春斗に何かあったら・・・
俺・・・
死にもの狂いで
助けっからッ・・・!
マジ・・・
有難うな・・・!」
と・・・
短くも真心を込めて
感謝の言葉を口にする・・・。
そして・・・
拓弥が・・・漸く・・・
いざ・・・出陣ッ!
とばかりに・・・
パッと潔く・・・
後ろを向き・・・
スーッと大きく
息を吸いながら・・・
曇り硝子の重たい扉に
手を置いた・・・
その瞬間・・・
あの・・・
聞き覚えのある・・・
甘ったるい声が・・・
タイミング悪く・・・
拓弥の耳を掠めた・・・。