『幼なじみ』
第30章 目撃
そして・・・
五階のVIPのフロアから・・・
漸く・・・
だだっ広い階段を
駆け降り・・・
一先ず・・・
先程まで
美波と一緒に
酒を交わしていた・・・
ハウスが激しく鳴り響く
二階のフロアに・・・
到着したあたしは・・・
「フ~」と
一息つきながら・・・
途方に暮れる・・・。
『あ~あ・・・
美波・・・
どこ行っちゃったんだろ・・・
泣いてたみたいだし・・・
お酒飲み過ぎて・・・
酔い潰れてなきゃ
良いけど・・・
あ~もうッ!
二人してポケベルしか
持ってないから・・・
連絡取りようが
ないじゃんッ・・・!
こんな暗くて・・・
人の多い場所で・・・
美波・・・
見つかるかなぁ・・・
とりあえず・・・
バーテンに・・・
聞いてみるしかないかぁ・・・』
先程と何ら変化の無い・・・
熱気で充満している
ダンスフロアを前に・・・
不安げに・・・
キョロキョロと
辺りを見回しながら・・・
あたしは・・・
何だかポツンと・・・
一人だけ
取り残されたような・・・
孤独感に
苛まれてしまい・・・
段々と・・・
泣きたい気分に
取り憑かれて行く・・・。
『あ~ダメダメ・・・
こんなことで
ヘコたれてたら・・・
美波なんか・・・
絶対見つかる訳
ないよね・・・
頑張んなきゃッ・・・!』
自分に喝を入れ・・・
何とか気持ちを
取り戻した
若輩者のあたしは・・・
美波と偶然バッタリ・・・
会えるよう・・・
心の中で・・・
神様に祈りながら・・・
未だ行列の絶えない
バーカウンターへと・・・
人混みを・・・
すり抜けるように
向かって行った・・・。