『幼なじみ』
第33章 救済
「み・・・美波ッ・・・!」
あたしは・・・
空になったビール瓶を・・・
闇雲に投げ捨て・・・
わき目も振らず・・・
一心不乱に・・・
美波の元へ駆け寄り・・・
震える両肩を・・・
そっと抱え込む・・・。
が・・・しかし・・・
あたしを・・・
拒む気力だけは・・・
最後の砦として
残していたのであろう・・・
持っていた
ビール瓶を・・・
ガンッと床に置き・・・
あたしの両手を・・・
肩から振り払った
美波は・・・
「あたしに触んな・・・」
と・・・
冷たく言い放つと・・・
フラつきながらも・・・
自力で立ち上がり・・・
床を見つめたまま・・・
完全に・・・
あたしに背を向け・・・
おぼつかない
足取りで・・・
歩き始めてしまう・・・。
「美波・・・
お願い・・・だから・・・
行かないで・・・」
泣きたい気持ちを
堪えながら・・・
聞き取れない程の
蚊細い声を・・・
必死になって・・・
喉から絞り出し・・・
美波を・・・
引き留めては
みたものの・・・
先程・・・
VIPのカウンター席で・・・
倒れそうなあたしを・・・
拓弥が支えただけ
とはいえ・・・
長い間・・・
二人で・・・
抱き合っていたのは・・・
紛れもない事実であり・・・
美波に心の底から
信じて
貰えるような・・・
毅然とした弁解が
一つも思い付かない
あたしは・・・
途方に暮れたまま・・・
肩を落とすより・・・
他なかった・・・。