
『幼なじみ』
第36章 冷徹
『・・・ッ?!』
ピンッと・・・
張り詰めた静寂に・・・
湾岸線を走る
車の音だけが・・・
響き渡る中・・・
角材が転がる音に・・・
ハッとし・・・
目を見開く拓弥に
向かって・・・
とことん
追い詰められた様子の・・・
少年サリーが・・・
突然・・・
血気盛んに・・・
猛ダッシュで
駆け寄って来る・・・。
そして・・・
アッと言う間に・・・
背中に回り込み・・・
体を瞬時に
強張らせた
拓弥の両脇から・・・
自分の両腕を
グッッ!と豪快に・・・
突っ込んだかと思うと・・・
なんと!
強烈な・・・
火事場のくそ力で・・・
拓弥を一気に・・・
羽交い締めにして
来たのだ・・・!
「キ・・・
喜多見さんッ・・・!
ヤ・・・殺っちゃって・・・
クダサイヨ・・・
お・・・オレ・・・
コイツのコト・・・
か・・・
抱えてますから・・・
ハッ・・・早くッ!
お願いシマス・・・ヨッ!!」
迂闊にも・・・
喜多見とサリーの・・・
見応えのある寸劇に
気を取られ・・・
まんまと油断し・・・
今・・・正に・・・
囚われの身に
なってしまった・・・
アホ丸出しの
拓弥の耳元で・・・
まさかの・・・
人間非常事態に陥った
少年サリーが・・・
フンッフンッと
闘牛の如く
呼吸を荒げている・・・。
しかし・・・
そんな・・・
興奮状態の
サリーをヨソに・・・
深々と・・・
眉間にシワを寄せた・・・
喜多見は・・・
何とも・・・
訝しげな表情で・・・
此方を見つめては
いるものの・・・
不思議なコトに・・・
タチの悪い輩にも
とかく・・・
指示しようともせず・・・
全く・・・
微動だにしなかった・・・。
