
『幼なじみ』
第37章 騙欺(へんぎ)
そんな・・・
ボタンを
掛け違えた・・・
突拍子もない・・・
現実逃避を続ける・・・
まさに・・・
薬物中毒者のような・・・
自分の都合の良い・・・
架空の世界に・・・
入り込んでしまった・・・
拓弥を・・・
面白がるように・・・
見つめていた
喜多見が・・・
人を小馬鹿にした
冷ややかな笑みを
浮かべながら・・・
これみよがしに・・・
話し掛けて来る・・・。
「フッ・・・
あのさァ・・・
いきなり・・・
立ち止まって・・・
そこの非常口
見てるけどさ・・・
誰も助けに・・・
来ちゃくれないよ・・・?
いい加減・・・
諦めたら・・・?
つーか・・・
こっちも今から・・・
お前を・・・
捕って食おうって
腹じゃねーんだし・・・
俺の話が済み次第・・・
そのブツ・・・
気持ちよく
渡してくれれば・・・
すぐ解放してやるから・・・
そんな・・・
キョドんなって・・・!
ククッ・・・」
人の気持ちを・・・
見透かすかのような・・・
魔の千里眼に
長けている・・・
喜多見の鶴の一声で・・・
ハッと我に返り・・・
上手い具合に・・・
現実に・・・
引き戻されたものの・・・
春斗が・・・
この屋上に・・・
来るハズが
無いんだと・・・
逆に思い知らされ・・・
アワアワと・・・
慌てふためきながら
その場に
立ち竦む拓弥に・・・
含み笑いを
浮かべ続ける
喜多見が・・・
漸く・・・
拓弥が一番
聞きたかった話を・・・
白々と話し始めた・・・。
