『幼なじみ』
第40章 悪夢
「いや・・・
そ・・・それがッ・・・
かなり・・・
ヤバイんだってッ・・・!!
今・・・
救急車で・・・運ばれる・・・
その血まみれの男・・・
たッ・・・
拓弥・・・なんだよッ・・・!!」
必死な形相の
春斗の台詞を・・・
まんまと・・・
聞き齧ってしまった
あたしは・・・
一瞬にして・・・
全身が刃物で・・・
切り刻まれるような・・・
強烈な・・・
痛みを伴う幻覚に
襲われる・・・。
『い・・・今・・・
【タクヤ】って・・・
言った・・・・・・?』
自分の耳を・・・
疑いながらも・・・
口から心臓が
飛び出してしまいそうな
あたしをヨソに・・・
動揺さながら・・・
大きな目を
更に見開いた梨香が・・・
息が上がり・・・
興奮状態の春斗を・・・
更に煽るように・・・
ヒステリックに・・・
責め立てる・・・。
「う・・・嘘ッ・・・!!
あんな・・・
ボロボロで・・・
血まみれの男が・・・
た・・・拓弥くん・・・
なわけ・・・ないじゃん・・・?!
ねぇ・・・春斗・・・?
嘘・・・だよね・・・?
春斗ってば・・・!!
何とか・・・
言ってよッ・・・!!」
激しさを増す
春斗と梨香の会話に・・・
無理矢理にでも
入ろうと・・・
開いたままの口を・・・
パクつかせてみても・・・
余りのショックからか・・・
歌を忘れた・・・
カナリアのように・・・
言葉が全く・・・
出て来なくなって
しまったあたしは・・・
アワアワと・・・
まごついたまま・・・
その場に・・・
立っているのが
精一杯だ・・・。
すると・・・
明らかに・・・
気が動転している
あたしの救援信号を・・・
漸く・・・
察知したのか・・・
ハッとし・・・
此方に向き直った
梨香が・・・
一瞬・・・
バツの悪そうな
表情を・・・
浮かべたかと思うと・・・
申し訳なさそうに・・・
あたしの顔を
覗き込んで来た・・・。