『幼なじみ』
第41章 慟哭(どうこく)
『ッ・・・!動いた・・・』
少なからず・・・
意識を・・・
取り戻したであろう・・・
目の前の男を・・・
固唾を飲んで・・・
見守りながら・・・
あたしが一先ず・・・
ホッと胸を・・・
撫で下ろすさ中・・・
パタリと・・・
サイレンの音が・・・
鳴り止むと同時に・・・
救急車が・・・
ゆっくりと・・・
動きを止める・・・。
そして・・・
ガンッ!!
という衝撃と共に・・・
勢いよく扉が開かれ・・・
待ち構えていた・・・
数名の医者と看護師が・・・
サッと此方に・・・
駆け寄って来たかと
思うと・・・
何やら・・・
医療の専門用語を
けたたましく・・・
やり取りしながら・・・
血まみれのその男を・・・
ストレッチャーごと・・・
滑らすように・・・
外へと引きずり出し・・・
命のバトンを
繋ぐように・・・
アッと言う間に・・・
病院の中へと・・・
搬送して行った・・・。
「きっと・・・
大丈夫だよね・・・」
漸く男の体が・・・
医者に引き渡され・・・
僅かばかりの
安心感に包まれた
あたしは・・・
自分を・・・
励ますかのように・・・
ポツリと呟く・・・。
すると・・・
そんな束の間の・・・
穏やかな空気を
一蹴するかのように・・・
隊員の一人が・・・
「いいですか・・・?
タクヤさんは・・・
ICU・・・集中治療室に
搬送されました・・・
容態が分かり次第・・・
ご報告しますので・・・
車から降りて・・・
救急外来の受付で・・・
お待ち下さい・・・。」
と・・・
機械的に・・・
声を掛けて来るが・・・
ICUという横文字を
耳にした途端・・・
壮絶な現場を想像し・・・
一瞬にして・・・
身が引き締まった・・・
あたしは・・・
自分を奮い立たせ・・・
漸く・・・
あの男の・・・
血まみれの私物を
確認する決意を
固めると・・・
車内の隅に置かれた
ビニール袋の縛り口を・・・
しっかりと手に持ち・・・
隣で片時も離れず・・・
心配してくれていた
セキュリティに・・・
支えられながら・・・
慌ただしく・・・
救急車から・・・
降りて行った・・・。