『幼なじみ』
第41章 慟哭(どうこく)
「ウッ・・・・・・」
余りの激臭に・・・
一瞬・・・
顔を背けるも・・・
この強烈な血生臭さが・・・
凄まじく・・・
殴打された・・・
この私物の持ち主の・・・
酷い怪我の具合を・・・
激しく物語っており・・・
何とも・・・
言いようの無い
痛切な想いが・・・
一気に・・・
込み上げて来る・・・。
『だ・・・誰が・・・
こんな・・・ヒドイ事を・・・』
手を止めたまま・・・
悲嘆に暮れる矢先・・・
この可哀想な男の・・・
悲痛な心の叫びが・・・
あたかも・・・
聞こえたような・・・
錯覚に陥り・・・
どうにも・・・
いたたまれず・・・
その場でグッタリと・・・
項垂れてしまいそうに
なるが・・・
この血まみれの
私物から・・・
紛れもない・・・
この男の・・・
晴らしたい無念を・・・
感じ取ったあたしは・・・
突然・・・
見えない力に・・・
突き動かされるように・・・
袋の中に・・・
手を伸ばすと・・・
ネチョネチョと・・・
冷たく湿った・・・
衣類らしき・・・
一番上の布切れを・・・
躊躇することなく・・・
指でそっと摘まみ・・・
目線の高さまで・・・
ゆっくりと持ち上げた・・・。
『・・・・・・・・・・・・ッ!!』
ハッと息を飲む・・・
あたしの体に・・・
震撼が走り・・・
クラブで・・・
最初に声を掛けてきた
拓弥の立ち姿が・・・
忽然と浮かび上がる・・・。
『コ・・・コレ・・・
た・・・拓弥の・・・だ・・・・・・』
見覚えのある・・・
薄汚れた・・・
血まみれのTシャツを・・・
震える両手で・・・
握り締めるうち・・・
たった今・・・
ICUに搬送された・・・
顔面の潰れたあの男と・・・
拓弥の笑顔が・・・
徐々にリンクし・・・
愕然とする・・・
あたしの心の
バランスが・・・
一気に・・・
崩壊してしまったの
だろう・・・
今まで・・・
懸命に堪えて来た・・・
壮絶な胸の内を・・・
全て・・・
吐き出したい衝動に
駆られたあたしは・・・
とうとう・・・
声を挙げ・・・
その場に泣き崩れた・・・。