『幼なじみ』
第41章 慟哭(どうこく)
「た・・・拓弥――――ッ・・・・」
絶望的な現実を・・・
突き付けられた・・・
あたしの頬を・・・
あとからあとから
苦い涙が伝って行く・・・。
握っていた・・・
拓弥の・・・
血み泥のTシャツで・・・
がむしゃらに顔を覆い・・・
血と汗と香水の・・・
混ざりあった
匂いに包まれるうち・・・
徐々に・・・
思考回路すらも・・・
停止して行き・・・
遂には・・・
何も考えられない
状態にまで・・・
陥ってしまった
あたしに・・・
心配した・・・
セキュリティが・・・
諭すように
声を掛けてくる・・・。
「私物・・・やっぱり・・・
彼氏の・・・だったんだな・・・?
ツライよな・・・
大丈夫・・・か・・・?
泣いてさ・・・
どうにかなるもんじゃ
ねーけど・・・
気が済むまで・・・
いいから・・・泣きなよ・・・
でも・・・アイツ・・・
きっと・・・助かるよ・・・
な・・・?
絶対・・・大丈夫に・・・
決まってるって・・・」
弱々しい・・・
セキュリティの声が・・・
うっすらと・・・
遠くで聞こえる錯覚に
囚われるさ中・・・
完全に・・・
自分の世界に
入り込んでしまった
あたしは・・・
ここが何処かも
分からなくなり・・・
ただひたすら・・・
子供のように・・・
泣きじゃくっていたが・・・
時が経つにつれ・・・
体の・・・
ありとあらゆる水分も
出切ったのだろう・・・
ヒックヒックと・・・
どうにも止まらない・・・
嗚咽だけを・・・
周囲に響かせながらも・・・
徐々に泣くのを止め・・・
拓弥のTシャツを
ゆっくりと顔から離し・・・
膝に抱えたままの・・・
ビニール袋の上に
そっと重ねると・・・
ワンピースの
ポケットから・・・
おもむろに取り出した
ハンカチで・・・
化粧の崩れた・・・
ベチャベチャの顔面を・・・
ゴシゴシと・・・
思い切り拭き始めた・・・。