
『幼なじみ』
第11章 嫌悪
そんな・・・
暗い気持ちを
紛らわすかのように・・・
灰皿で・・・
煙草を
グリグリと揉み消した
拓弥は・・・
車から飛び降り・・・
小走りに
自宅へと
向かって行く・・・。
カチャッ・・・
「ただいま・・・」
マンション一階の
突き当たりにある
部屋の玄関を開け・・・
静かに中へ入るが・・・
全く返事が無い
真っ暗な室内は・・・
空気が・・・
どんよりと濁り
息苦しい程だ・・・。
「フ~」
拓弥は・・・
大きく一息つき・・・
殺風景なリビングと
ベランダとの
境にある・・・
大きめの・・・
硝子窓を開け・・・
新しい空気を入れる・・・。
「腹減ったな・・・」
毎夜殆ど・・・
家を留守にする
母親は・・・
離婚して間もなく・・・
手狭なスナックを
オープンさせ・・・
ママとなって・・・
必死に働いていた・・・。
が・・・しかし・・・
拓弥が・・・
高校卒業するまでは
何とか家事もこなし・・・
慣れない水商売と
両立させて
いたものの・・・
今は大概・・・
昼まで寝て・・・
夕方頃から・・・
店のお通しを
サッと作り
出掛けて行く・・・
そんな・・・
怠慢な毎日を・・・
繰り返している・・・。
「堕落したもんだよな・・・」
拓弥は・・・
食器棚の上に・・・
無数に・・・
積まれている・・・
カップラーメンを
選びながら・・・
母親に対し・・・
面と向かっては
決して言えない
独り言を・・・
ボソッと一言・・・
呟いた・・・。
