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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 その時、向こうから見憶えのある姿が歩いてくるのが見えた。紅い龍袍(りゆうほう)を身に纏った大柄な青年―むろん王である。燃えるように鮮やかな焔の色に天翔る龍が大胆に縫い取られている正装は国王ならではのものだ。
 身の丈のある導(ド)宗(ジヨン)には、この正装がよく似合った。筋骨逞しい堂々とした体軀ではあるが、けして無骨な印象はない。むしろ、端整で品のある面立ちは流石に生後三ヵ月で東宮位についたという筋金入りの貴公子だけのことはある。

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