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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 何も言葉を、無駄な努力を重ねる必要はない。国王という地位と力をもってすれば、この世で手に入らぬものはないのだ。
 彼はクックッと低い声で嗤いながら、何故か余計に愼女官が遠くにいってしまったと感じられるような気がしてならなかった。
 空しい、すべてのものが空しかった。
 だが、もう少しの辛抱だ。あと少し待てば、二、三日中にはあの娘のやわらかな身体に存分に触れられる。
 彼は自分に言い聞かせてみたけれど、胸の真ん中にぽっかりと空いた空洞は余計に空しさで覆い尽くされてゆくようだった。

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