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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 あの娘は自分で言ったのだ。
 人にはそれぞれに相応しき立場があり、更にはそれに伴う行動というものが求められる。
 彼はクッと低い嗤い声を洩らした。
 そうだ、何故、そうしなかったのか。自分は国王であり、この国では絶対の存在なのだ。自分が望めば、たとえどのような女であれ、我が物にできる。ましてや、愼女官は後宮の女官だ。建て前上も女官であれば、国王である彼の所有物、彼は彼女の〝良人〟なのだ。
 良人が妻を抱いたからとて、何の不思議があろう。国王が女官を欲するのはごく当然のことだ。

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