テキストサイズ

夢で逢えたなら~後宮秘談~

第3章 結ばれる

「いいえ、崔尚宮ではありませぬ」
 監察尚宮は慌てて首を振った。この機嫌の悪さでは、王は今すぐにでも崔尚宮を呼び出し、何を言い出すか知れたものではない。
 親しみやすい人柄ではあっても、実のところ、王が心から人との繋がりを欲することはあまりない。常に対する相手との間に一定の距離を置こうとするのは、やはり赤児のときに王(ワン)世子(セジヤ)となり、十歳という幼さで王位についた特別な環境で育ってきたからだ。
 王が生まれ落ちたそのときから、ずっと傍で見守ってきた監察尚宮は誰より王の複雑な気質を知っている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ