夢で逢えたなら~後宮秘談~
第1章 恋の訪れ
殊に、三月の末から四月の初めにかけて開く桜の時分は百花にとっては一年中で最も愛すべき季節である。薄紅色の桜貝を思わせる小さな小さな花びらが風に乗って舞い踊る様を眺めていたら、この膨大な量の洗濯物だって一向に苦にはならないはずだ。
そう、もうすぐ春、桜の季節が訪れる。だから、きっと何か―例えば、どんな些細なことにしたって、良いことが起こるに違いない。
百花は全く根拠のない確信めいた予感を抱(いだ)きつつ、それが例の彼女の唯一の難点の果てしない空想に耽り始める。全く、この困った癖のせいで、一日に数え切れないほど崔(チェ)尚(サン)宮(グン)からの
そう、もうすぐ春、桜の季節が訪れる。だから、きっと何か―例えば、どんな些細なことにしたって、良いことが起こるに違いない。
百花は全く根拠のない確信めいた予感を抱(いだ)きつつ、それが例の彼女の唯一の難点の果てしない空想に耽り始める。全く、この困った癖のせいで、一日に数え切れないほど崔(チェ)尚(サン)宮(グン)からの