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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第4章 愛撫

 百花は何も言えず、もう一度会釈して立ち去ろうとした、その時。
「愼尚宮」
 再び呼び止められ、百花は立ち止まった。
「はい、何でしょうか」
「殿下はああ見えて、とても繊細なお心をお持ちです。これまで本物の恋をなさったことがないゆえ、初めての恋に戸惑っておられる」
 あの方はお淋しいのですよ。
 かつて国王の乳母であった女(ひと)は静かな瞳で語った。
 百花は眼を見開いて、監察尚宮を見つめる。

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