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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 一生涯、王宮に閉じ込められ、顔すらろくに知らぬ王に操を立てて過ごす―その悲惨な境遇を〝鳥〟や〝咲いて散る花〟になぞらえられたのだ。
 花の盛り―娘盛りを誰にも愛でられもせず、男と結ばれることもなく、ひっそりと咲いて散る花。王宮という鳥籠に閉じ込められ、生涯、大空を自由に飛ぶことを許されない飛べない鳥。まさに後宮女官の生涯をたとえるにふさわしい形容であった。
 だが、百花には〝咲いて散る花〟や〝飛べない鳥〟の宿命もさして哀しくはなかった。女官になったお陰で、百花は母に同い年の娘たちが買ってあげられないような物だって買うことができるのだ。

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