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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

  妖婦

 その後も、愼尚宮は毎夜、大殿で王の夜伽を務める傍ら、変わらず殿舎の掃除から洗濯までを一人でこなし続けた。あまりにも連日の荒淫で、薔薇色だった健康そうな頬は肉がそげ落ち、血の気を失った。一晩中眠ることができないため、眼の下に隈ができ、黒曜石のようにきらきらと輝いていた大きな瞳に以前のような光はない。
 身体が相当辛いだろうことは最早、誰の眼にも明白なのに、けして弱音も泣き言も吐かない。王がどれだけ夜、責め立ててみたところで、翌日にはいつもどおり黙々と働いた。

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