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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

 胃の腑の具合でも崩したのだろうと軽く考えていたら、頑固な吐き気はいっかな治まる様子もなく、かえって烈しくなるばかりだ。
 そのせいで、ただでなくとも弱っていた身体が余計に弱ってしまった。加えて、この真夏の暑さである。
 百花は眼前の小卓を恨めしげに見つめる。松の実粥の入った碗と匙が置いてあるだけだが、全く手が付けられていない。今朝などは見ただけで烈しい嘔吐感に見舞われ、匙を手に持つことすらできない酷い有り様だった。
 手付かずのままの粥を見つめていた時、部屋の戸が静かに開いた。

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