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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

 張緑水―、かつて暴君として名高い十代国王燕山君をその色香で惑わし、妓生から王の愛妾にまで成り上がり、淑媛(スクウォン)の位階まで得た稀代の妖婦として語り継がれている。
 すべてが百花にとっては辛いばかりの状況が続く中(うち)に、いつしか暦は八月に入ろうとしていた。
 八月を目前に控えた朝、百花は朝食を取っている最中だった。とはいえ、どうも最近―ここ半月ばかりは食が進まない。何か口にしようとすると、猛烈な吐き気が襲ってきて食べられなくなってしまうのだ。

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