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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

 と、昌淑がふと匙を小卓に置いた。
「百花、私、大変なことを聞いてしまったのよ」
 え、と、眼を見開くと、昌淑が近寄ってきて、耳許で声を低める。
「金淑儀の容態が深刻らしいわ。もう既に国王殿下を初め、お義父上の兵曹判書さまも金淑儀さまの病床にずっと詰めていらっしゃるほどみたい」
 つまり、それだけ予断を許さないといったところだろう。
「あと少しでご出産なのに、お気の毒に」
 百花はそう言うと、溜め息をついた。人の世は思うに任せないものらしい。

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