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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

 国王の第一子を見事懐妊し、出産予定日まであとふた月となりながら、金淑儀の衰弱は著しく、生命が危ぶまれるほど病状は悪化の一途を辿っていた。
 昨夜、王からのお召しはなく、百花は久しぶりに一人でゆっくりと朝まで安眠できた。四月に大殿の寝所に召されて以来、初めてのことである。本当なら王のお召しがないのを哀しむべきところだろうが、百花は裏腹に嬉しくてならなかった。
 一人で手脚を伸ばしてゆっくりと眠れるということが、これほど素晴らしいことだと思えたのは初めてだ。

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