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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

 弾みで湯呑みが床に転がり、粉々に砕け散った。中身が零れて茶色い液体が海のようにひろがる。
「どうして、昌淑―」
 茫然と昌淑を見つめると、彼女は真剣な顔でこちらを見返していた。
「もしかして、毒が入っていたら、どうするの?」
「でも、これは昌淑がわざわざ煎じて持ってきてくれたものでしょう? 毒なんか入っているはずがないじゃない」
「それは判らないわ」
 昌淑は真顔で実に怖ろしいことを言う。

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