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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第5章 妖婦

 もう一度、薬湯を煎じ直してくると言って、彼女は小卓を下げて出ていってしまった。
 今度はもう一人、別の女官―絶対に信頼できる者を連れて交替で番をしながら煎じるという念の入れようだ。
 だが、自分が懐妊しているだなんて、百花には到底、信じられない。いや、信じたくないのだ。けれど、確かに一回りどころかふた回りも痩せた身体に、異様に膨らんだ腹はどこか不自然というよりは無不気味だ。
 百花の眼に大粒の涙が溢れる。

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