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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 ちなみに、内官は、去勢した男性である。内侍(ネシ)府(フ)という内官を統括する部署があるほどで、内侍府は一大勢力を誇っていた。既に男ではないので、後宮にも自由に出入りできるし、王の愛妾たちの身辺のご用を仰せつかることも多かった。
 また、王に常に近侍し、その意を伺う機会に恵まれているため、国王に最も近い臣下として絶大な権限を有し、時に政にも影響を及ぼすこともあるほど、その存在感は大きい。―でありながらも、その名前は公の記録には残らず、一生を〝国王の影〟として常に一歩控えた日陰の身でなければならない。
 その身分も宦官ということで一般の文官、武官よりは一段低く見られがちであった。共に国王のために一生を捧げ影の存在に徹するといった点で、女官と内侍は立場が共通している。

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