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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 だから、一生、夢を持ち続けて、努力を止めないでと、そう言いたかったのではないだろうか。もちろん、それは百花なりに理解したことなので、母の真意がどこにあるのかは判らなかったけれど。
 それはともかく、百花は一生をこの世界―後宮という場所で生きてゆく覚悟だけはしっかりとある。それに、女官の仕事は厳しいし、気は遣うし、結構な重労働ではあるが、また、愉しい時間も多い。歳の近い少女たちと過ごすひととき―他愛ないお喋りは心躍る時間だった。
 お下がりのお菓子をつまみつつ、内官(ネーガン)(内侍(ネシ)、宦官)の誰が格好良いかとか、崔(マー)尚(マ)宮さま(ニム)はこの頃、特に機嫌が悪いとか、とりとめもない内輪の話題に打ち興じる。それは苛酷な仕事の合間の貴重な休み時間であった。

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