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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第6章 鷺草~真実の愛~

 こんなときなのに、百花は端整な王の顔に見惚れていた。
 王の腕に抱えられているため、衣服越しに張りつめた筋肉が感じられる。百花は狼狽えた。
 身体の内で生まれた奇妙な熱がゆっくりひろがってゆく。それは寝所で膚を合わせたときの感覚―妖しい官能の漣とは似ているようで、少し違っていた。
「どうして、そなたはいつも無理ばかりする」
 窘めるような、拗ねたような口調はけして不機嫌ではなく、むしろ駄々っ子を相手に困っているようであった。

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