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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第6章 鷺草~真実の愛~

 何しろ、あのお二人は、若い頃の話をなさるのが大好きだから。
 さあ、そろそろ行くとしよう。
 扉を開けて部屋を出てゆく間際、先刻までとは打って変わった強い風が吹き込んできた。
 机の上に置いたままの書きかけの書物が風ではらりと捲れる。
 慌てて戻りかけた私は、思い直して再び部屋を出た。
 まあ、良い。あの重たげな本が少々の風に飛んでいってしまうことなど、まずあり得ないだろうから。遅れると、また口煩い叔母上にお叱りを受けてしまう。
                 (了)

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