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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 崔尚宮は百花の呑気さにはほとほと困っているが、百花は至って大真面目に自分も崔尚宮のようになりたいと憧れているのだ。もっとも、崔尚宮は若い女官たちの誰からも慕われているわけではない。
 数人いる尚宮の中では極めて目立たない存在だ。崔尚宮の気性によるところも大きいのは否めないが、それでも、入宮して以来、ずっと崔尚宮の下で女官としての教育も受け、見習い女官から一人前の女官となり働いてきた百花には、いちばん近い存在であった。
 尚宮は王の側室を除いて、女官の中では正五品の位を持つ最高位の役職であり、身分は両班相当と見なされる。庶民にすぎない百花が仮に尚宮にまで昇進できれば、破格の出世ともいえた。

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