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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 実家の母である杏仁(アンニン)はいつも幼い彼女に言い聞かせていた。
―人間、努力さえすれば、できないことは何一つない。夢は諦めたら、そこでおしまいなんだよ? どんなに不可能だと思えることだって、強く願って努力を続けていれば、いつか必ず現実になるものさ。
 百花が女官として王宮に上がったのは七歳のときだ。しがない薬売りだった父親が亡くなって、まもなくのことだった。
 父は町の薬売りで、小さいながら自宅に兼用の店を構えていた。しかし、根っからのお人好しの父は高価な薬草を貧しさゆえに薬代の払えない客に惜しげもなく分け与えた。それもたまになら良いのだが、しょっ中のことだ。

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