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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 昨夜などは礼曹判書の娘、沈(シム)貴人(キイン)の許に渡ったら、胸にしなだれかかられ、〝殿下、私にお子を授けて下さいませ〟などと単刀直入に言われ、これには流石に愕いた。
 沈貴人に勧められた酒を口にしていた彼はそれでも鷹揚に笑い、
―子は天からの授かり物だと申すゆえ、そのように急いても致し方なかろうよ。
 と軽く受け流そうとしたのだが、沈貴人はいきなりさめざめと泣き出した。
―また、そのようにつれないことを仰って。殿下は、たまにしかいらっしゃらないのですもの、こんな有り様では、一向に御子が授からないのも当然ですわ。

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