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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 もっとも、そんな風になるのは、六人のどの妃たちと一緒にいても、似たようなものだが。ただ一人、さして力のない家門から嫁いできた金(キム)淑(スウ)儀(ギ)は歳も十五歳と若く、大人しやかな少女だが、こちらはあまりにも大人しすぎて〝自分〟というものを全く持っていない。
 始終、王の顔色ばかりを窺っていて、おどおどと怯えている気弱さが目立ち、大人しいのもここまでくると、気づまりなだけで話しかけるのさえ躊躇われてしまう。
 この娘の父は中級官吏にすぎないのに、妙齢の娘のいない叔父(兵曹判書)が養女として後宮に送り込んできた。全く傍迷惑な話である。叔父はどうやら、王の外祖父になるという野心をいまだ棄ててはいないようだ。

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