甘すぎて気絶
第8章 スーパーヤギヌマ
それから季節は秋から冬へ。
すっかり寒くなってしまって
あーあ、早く春が来ないかな、なんて毎日思う。
「秋冬は服は可愛いけどこの寒さがな〜〜…」
店内は暖かいけれど冷え性なあたしは
指先が冷たくて冷たくて…
はーっ、と息を吹きかけて手を擦り合わせた。
ここ最近、お惣菜のメニューがリニューアルして
客足が一気に増えたスーパーヤギヌマ。
今まで以上にレジに並ぶお客さんの列が長い。
---ピッ、ピッ、---
「432円、こちらコロッケが三枚ですね〜〜、」
小さい頃にレジのお姉さんに憧れを抱いていたあたしは
レジ打ちのアルバイトが嬉しくてたまらない
お客さんの列が長くても全然苦じゃなかったりする
(毎週水曜日は22時からのドラマがあるから
早く帰りたいんだけどっ)
ひとり、またひとりと
お会計をして商品を渡していく
「お願いします」
最後の1人、は、作業着のお兄さん!
どれどれきょうは何弁当かな、とカゴを見ると
「いらっしゃいま……せ」
あれ、野菜ジュースに、お漬け物??
?????お弁当は!?!?
あたしの目が点になったのが分かったのか
苦笑いしながらお兄さんが一言
「あー、なんか今日すごいっすね、売れるの早くて。
お弁当何も残ってなかったんで…」
確かに今日はポイント2倍デーだから
主婦層が燃え上がっていたけれど…
お惣菜コーナー完売とは…
いやいや、でもだからって
野菜ジュースとお漬け物ー!?!?
カップ麺とかさ、あるじゃん!?!?
「これじゃお腹空いちゃいません??
カップ麺とか…」
「いや、俺んちポットもヤカンもなくて…
電子レンジしかないんすよね〜」
ははっ、と笑うお兄さん。
いや、笑えないわ!
うーん、うーん、うーん…
一方的にお兄さんを見守っていたあたしとしては
なんだかすごく心配になっちゃって
気づいたら
「あたし、ご飯作りましょうか?」
なんて口走っていた