
甘すぎて気絶
第8章 スーパーヤギヌマ
「あ…そうだよな…
わりぃ、亜衣子だってもういい人くらいいるよな」
なんか俺自惚れたてたわ…とあたしの顔を見ないで
健太がポツリとこぼした。
あたしとお兄さんはそんなんじゃない。
でも、好きの気持を自覚した今
健太の元へはもう戻れない。
あんなに泣いて恋しかった健太の姿を見ても
なんとも思わない日が来るなんて…
でもこの気持ちをここで正直に話すと…
お兄さんに告白するようなもんだもんね
「…」
あたしの肩を抱きながら健太を見つめるお兄さん
を、チラリと見上げるあたし
「なるほどね。
なんとなくわかった。」
お兄さんがそうつぶやいて
あたしの肩をぎゅっと抱き寄せた
「悪いけど。
及川さんは今は俺のことが好きなんで。
それに今日はタンドリーチキンだし。
お引き取りネガイマス。」
にこっと笑ってそのまま玄関の中に
引っ張りこまれるあたし
ドアが閉まる寸前に見えたのは
健太の寂しそうな表情。
それでも…。
力強く助けてくれたこの腕がただただ愛おしいんだ。
